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「アラブが見た十字軍」「傭兵の二千年史」読んだ
現在休載中の「鷹の王」や、将来書きたいと思っている戦史ものの資料として読みましたが、むっちゃ面白かったです。

世界観がぐるっと変わりますね。

どちらも講談風に書かれているので読みやすくて、飽きません。

「傭兵の二千年史」
戦争というものの性質や目的も、時代によって変わっていくわけですが。

古代においては水などの資源、土地の奪い合いだった戦争が、君主の征服欲や民族のぶつかりあいとなり、やがて複雑な経済活動がからんできて、中世から近代にかけて戦争は国家間における重要な産業となっていく。

国が成長していく段階では国民皆兵だったギリシア・ローマ世界では、帝国が確立すると豊かになりすぎて、植民地から輸入する穀物の価格競争に負けてしまう個別の市民達の生産活動が脅かされ、土地を失った市民たちは奴隷になるか傭兵になるかない。

国が豊かになると一般市民の生産階級が空洞化し、中産階級は失業者が増え、国民力が弱体化するというのは、どっか二十一世紀の東の島国でも現在進行形ではあります。

歴史と国家寿命のサイクルというやつですね。
ただ、現代は国家と周辺諸国が行き詰まったら戦争で余剰な人口や物資を消費して、破壊後やり直す、という荒療治ができないことか。

中世にいたると「傭兵」というのは、耕す土地もない農民を兵士に、相続する財産や領地のない貴族たちを軍人へと育て上げる雇用の受け皿だった。
かれらは平和になると仕事がなくなるので、戦場を求めて流浪することになる。

十字軍の遠征も、そういった増えすぎたならずものたちや難民をヨーロッパから吐き出してしまおうという、教皇や君主の陰謀だった。
ゴミ捨て場にされたシリア・アラブが気の毒。

やがて近代に入り、君主に雇われて戦う傭兵の独壇場だった戦場は、ナポレオン時代にひとびとが「国家意識」に目覚め、第一次大戦へ向かって「国民」が戦場の主役になっていく。
ローマの崩壊から二千年、戦争は再び国民皆兵の流れに戻っていく。

「人間」「歴史」「戦争」が立体的に見えてくる面白い著作だった。

「アラブが見た十字軍」
読めば読むほど中東が気の毒になってくる。

上の「傭兵の二千年史」と合わせて読むと、ヨーロッパ・中東の歴史は密接につながっていることがわかって面白い。
十字軍の遠征のときすでに、アラブの高度な文明・文化は斜陽を迎えていた。
政治は分裂状態で、事実上中東を支配していたのはイスラムのリーダー、アラブ人カリフでなく、トルコ人やイラン人。
行政や医学、建築、美術や文学などはヨーロッパよりはるかに進んでいたのに、政治は腐敗して代替わりのたびに、帝王から小領主まで政争や戦争で後継者を力づくで決める世界。
十字軍への対応も、十字軍を駆逐した将軍が次のイスラム帝国の支配者になるために、政敵たちは口では「聖戦」を唱えながら裏では十字軍と組んで互いの足を引っぱるなど、同じイスラム同士で統合協力することができないという情けなさ。

民衆は平和と繁栄を謳歌していたので、突然西からやってきた「野蛮人」の残虐さ非情さに、陵辱、虐殺されるまま。

十字軍に対して「聖戦」を呼びかけるのもアラブ人でなくトルコ人やイラン人、とくに「天上の王国」にもでてくるイスラムの英雄「サラディン(サッハラーディーン)」にいたってはクルド人。

あと、興味深いのは、このころすっかりアラブに征服されて影の薄いペルシア人ですが。
いろいろと暗躍していて、読んでいてペルシャびいきな私は口元がほころんでしまいます。

ニュースで今の中東・アラブ世界を見るたびに、未だに「十字軍にレイプされた」傷が癒えてないんだな、と胸が痛くなります。
現代の十字軍は石油資源が目的で、ヨーロッパでなく大西洋の西から無人爆撃飛行機を飛ばしているけどね。

せめて日本の自衛隊が国際支援でイラクに造った発電所や貯水池や、支援している病院は生き延びますように。
ああいう活動をゆうちゅうぶで見れるのはいいことですね。
自衛隊って、ダムや橋をちゃっちゃっと造っちゃうあたり、兵士というより土木技術士の集団。
なんとなくインフラ大好き古代ローマ軍と重なってしまう。
もっとも、日本の自衛隊は世界制服のためでなく、支援ボランティアでやっているのだけども。
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「ダブ(エ)ストン街道」読んだ
第八回メフィスト賞受賞作ということで。
著者は浅暮三文氏。

メフィスト賞はミステリの登竜門ということですが、本作はどちらかというとファンタジー。
ミステリーの要素はあるような、ないような。

あらすじ。

夢遊病で行方不明になった彼女タニヤを捜して、誰も帰って来たことのない、どこにあるのかわからないダブ(エ)ストンという場所をもとめ、迷い込んだ日本人考古学のケン。
そこに住む人はみな、自分の目的地がどこにあるのかわからず、ひたすら迷い続けて、一生抜け出すことはできないという。


ストーリーそれ自体には山もなく、谷もない。
主人公と出会う人も、主人公の道連れになる郵便配達員も、主人公とすれ違う人も、主人公に出会わないひとも、みんなみんなダブ(エ)ストン街道をさ迷っている。

その、さ迷い続ける人々が、丁寧に描かれている。

そして、主人公はさまざまな経験と困難と瀕死の病気を乗り越えて、それでも彼女タニヤの消息を尋ね続ける。

理不尽で、不条理で、意味不明な、閉ざされた沈黙の世界「ダブ(エ)ストン」

だけど。

私的には非常にツボでした。

ひたすらさ迷う王様の一行
誰が見ても恥ずかしい白馬の騎士
仲間が行き倒れてもひたすら走り続ける駅伝チーム
船長が見つからない幽霊船
アマゾンに帰りたい半漁人
王様をストーキングする人食い熊
ひたすら行進を続けるマーチングバンド

不吉な謎の赤い影の正体とは(←ミステリって、このへんと、ただひとりダブエストンから帰還した探検家の記録くらいかな)

出てくるキャラ全部が主人公とからむわけではないのですが、それぞれの軌跡と行動が、縦糸横糸に紡がれてゆき、間接的にかかわりあって、ドミノ倒しのように物語が織り上げられてゆく感じです。

好き嫌いは分かれるかもしれないけど、米華的には一押しでした。

読後感は「行き先を決めない旅に出たくなる」こと請け合い。
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