FC2ブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「リンの谷のローワン」読了
読後感:飽きることなく最後まで読めて、面白かったです。

勧善懲悪でないところが私的にツボです。
私の読み違いでなければ、物語のテーマの背骨は『調和』でしょうか。
わけのわからん魔王とかでてこないし。
魔法もかなり制限があるようで、スパイス以上の存在になっていないのがいい。
多少のご都合主義には(三巻『ローワンとクリスタルの守護者』参照)眼をつむって読むことができました。

デルトラよりもキャラや設定に深みがありました。
オーストラリア最優秀児童図書賞をとっただけのことはあります。
(デルトラもオーレアリス賞というSF・ファンタジー系の賞はとってますが)

家族や周囲の人々との人間関係が丁寧に描かれていたのがいいですね。
キャラの造形が脇にいたるまで立体的で良かった。
ランばあさんも、シーバばあさんもよかった。
シーバがどうしても、ヴィジュアル的にジブリの湯婆になってしまうのが悩みでしたが。
話の要である、ローワンが成長していくようすもとても良かったです。
脇のほうでラブらしきものの片鱗がちらっと出ていたのが初々しくて、児童書っぽかった。

あと、この物語を進めていくうえで重要な、英文学特有の謎解き韻文詩(ライムまたはリドル)ですが、和訳ではどうやっているのでしょうねぇ。翻訳者さんの苦労が想像できません。
どの行も韻を踏んでいるということを和訳上は無視することにしても。
なぞなぞ韻文詩は、ひとつの単語が抱える複数の意味をどのようにでも解釈できる謎かけ文になっています。
それに呼応する単語や文章も、英語ネイティブさえ頭をひねるようなものでなくてはなりませんから。
外国語にしたときに意味をなさなくなってしまうことは珍しくないわけです。
そういう場合は、日本語で意味を成すなぞなぞ詩を捏造して、物語に矛盾なくはめ込む必要があるのでしょうが、そんなことが可能なんでしょうか。
手元に和訳本をお持ちで、韻文詩をひとつ提供してくださる方がおられると嬉しいです。


以下ネタバレ






この戦わない、諸悪の根源を倒すことをしないヒーローというのが新鮮でした。
五編のどのものがたりでも、ローワンは戦うことなくひたすら試練をくぐりぬけ、生き延びたことで最後に「調和」をもたらすことに成功します。
そして、試練を果たすのに弱虫で非力な彼は周りの助けを素直に受け入れていきます。
でも、このしょってない彼が最後に決断をするのは自分自身。そのあたりがつらいですね。

で、世界を救うのがローワンでなければならない、という理由がなかなか薬味が効いていました。

まあ、ちょっと突っ込みたいのは、箱庭的世界観でしょうか。
あの人口でよく経済活動が成り立つなぁ、と(笑)
リンの谷の村と、魚人族のコミュニティ、流浪の民と、敵対するゼバック国しか存在しない、他の文明や国村の存在が一切感じられない……。

たとえば、四国と淡路島だけで閉ざされた世界が成立しているような。
そのわりにゼバック国の文明は異様に高い。

経済活動もですが、ムラの広場に全人口が収容できてしまうリンの民は、もしかして滅亡寸前ですか、みたいな印象を抱えてしまいます。

以下は読み落としただけなのかもしれませんが……

ローワンとその仲間たちの年齢が明らかにされていないので、いったいどのくらいの体格なのか謎でした。
物語五編のなかでは2~3年が経過しているらしいのですが。
一話めでは「子供ではあるけども、大人の仕事を任されても不思議ではない年頃」
というふうに表現されていましたから、13歳から15歳くらいを想定してしまいますが、この二年の違いは大きいですよ。
15歳の男子は早ければもう大人の体格に達しますしねぇ。
あと、後半に出てくるノリスとシャーラ兄妹の年齢差も語られていないので、ローワンの年に近いのはどっちなんだろうとか、どうでもいいことで悩んだりしました。

最後まで読んではじめて、なぜ弱虫で引っ込み思案のローワンが谷と世界を救えるただひとりの英雄なのか、リンの民の秘密とは、みたいなものが明らかにされるわけです。
うーむ。深い。

Comment

管理人にのみ表示する

面白そうですね
読みたくなってきました!
『訳の分からん魔王』が出てこないのはよいですね、魔法がある世界なのに。

近くの図書館にあるみたいなんで、今度読んでみます~。
コバヤマ | URL | 2010/08/19/Thu 14:59 [EDIT]
Re: 面白そうですね
コバヤマさま

> 読みたくなってきました!
> 『訳の分からん魔王』が出てこないのはよいですね、魔法がある世界なのに。

わけのわからないアイテムで無力化される魔王とか、読む前にごちそうさまですから。
(指輪物語みたいなアイテムと魔王の属性の間に必然性があれば別ですが)
しかもローワンは一切魔法が使えない!
最後に予言力を授かりますが、一時的な借り物でしかも使い方を知らない(笑)しかもあまり役に立ってない。

> 近くの図書館にあるみたいなんで、今度読んでみます~。

謎解き韻文詩のこともあるので、日英両方で読んでみると面白いかもしれません。

コメありがとうございます~。
悠希 | URL | 2010/08/20/Fri 03:42 [EDIT]
NoTitle
早速1,2巻借りてきました!
是非原書も読んでみたいですが、その前にナルニアコク物語の原書、1-7巻までまとまってる一冊が立ちふさがっております(苦笑)
日本語訳がよかったら読みたいリストに加えてみます!
コバヤマ | URL | 2010/08/20/Fri 13:05 [EDIT]
Re: NoTitle
コバヤマさま

> 是非原書も読んでみたいですが、その前にナルニアコク物語の原書、1-7巻までまとまってる一冊が立ちふさがっております(苦笑)

ナルニア原書に挑戦ですか!
頑張ってください!
私は四つしか読んでなくて。
上下巻で出るのかと四話集で一冊を買って、下巻が出なかったので、半分読んでないことに。
子供たちは図書館で読んでしまったらしく。

どうかコバヤマさまのお口にも会いますように。

コメありがとうございました。
悠希 | URL | 2010/08/20/Fri 18:40 [EDIT]

Track Back
TB*URL

Copyright © 星宿海. all rights reserved.
Design by Pixel映画山脈

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。